いつかその手に
石田のお立ち台。私の記憶が正しければ昨年の8月28日以来、約10ヶ月ぶりである。
あの日も今日も石田は中継ぎとしてお立ち台に上がっているのだが、その胸中は少し異なっているように映った。
8月28日は三度の登録抹消を経験したのち中継ぎとして一軍に復帰し、ようやく掴んだ3つ目の勝ち星だった。「投げることが幸せ」そう言いながら浮かべた安堵の笑みが、いかに苦しいシーズンを過ごしてきたかを物語っていた。だがこの時の石田は、嫌な言い方をすればある意味自分のために、自分を取り戻すために投げていたようにも思える。
そして今日。石田は二死満塁の場面での心境を問われ、「上茶谷が頑張っていたので」「上茶谷に失点をつけないように良いピッチングができたかなと思います」と話した。この言葉が意味するものとは、"誰かのために"投げることではないだろうか。そして、それは同時に中継ぎとしての自覚をも表している。
先日公開されたFORREALで石田は
「ぼくが先発をやっていた時に、勝ちを守ってくれた中継ぎのピッチャーがいっぱいいる。いまは、そういうピッチャーがやってくれたことをぼくが逆にやらないといけない立場だと思っています」
「背番号14が立つべき場所は。」「FOR REAL-in progress-」 | 横浜DeNAベイスターズ
と語っていたのだが、今日の石田はまさしくこの言葉を体現していたといえる。
先発への想いを滲ませながらも、石田の中には確かに中継ぎとしての自覚そして誇りが芽生えているのではないだろうか。
今日石田がお立ち台に上がることができたのは、今日の結果によるものだけではないはずだ。中継ぎとして与えられた仕事に全力で取り組んできたその姿勢にお立ち台という形で光が当たったのだと私は思っている。
次に石田がお立ち台に立つのはいつになるのか、それは誰にも分からない。
だが、そのときにはきっと石田の手には求め続けた勝ち星が掴まれていることだろう。