石田健大選手のFA行使を受けて
久々の更新になってしまいました。
今でも過去の記事を読んで下さる方がいらっしゃること、大変有難く存じます。
感情のままに書いていくので読みづらい部分も多いかと思いますが、ご容赦くださいませ。
まずは、石田選手に感謝を。
今年、開幕投手に選ばれたときは本当に嬉しかった。優勝への第一歩が託された、昨年度の活躍が目に見える形で実を結んだ、と思えました。
2019年、中継ぎから先発に復帰後、「先発での勝利はやはり特別」だと語っていたのを今でも鮮明に覚えていますので、シーズンを通して先発で活躍されている姿を拝見できたのはファンとしても嬉しい限りでした。
数字上は4勝ですが、石田選手が先発して勝利した試合はもっと多い。チームにも貢献されたと思います。
宮崎フェニックスリーグで石田選手の投球を見ることができたのも、嬉しい思い出です。来シーズンの活躍が期待できる落ち着いた投球でした。
石田選手を応援することが心の支えになっています。本当にありがとうございます。
そんな今シーズンでしたが、昨年オフの契約更改から石田選手のFAが心の片隅で引っ掛かりをおぼえていました。
石田選手は、ずっと横浜にいてくれるのだろうか。
石田選手の人生だから、後悔の無い選択をして欲しい。少しでも長く、幸せな野球人生を送って欲しい。
その思いはずっと変わっていません。間違いなく本心です。
ただ、私は「石田選手のファン」であり、「横浜DeNAベイスターズのファン」でもあるのです。
どうしようもないくらいに。
だから、「ずっと横浜にいてほしい」と思ってしまう。
いや、正確には、
「横浜には石田が必要なんだ」と、石田選手自身がずっと感じられる状態であってほしい。
必要とされる場所で輝いてほしいけれど、
石田選手にとってその場所が横浜だったらいちばん嬉しい。
私だけではなく、石田選手を応援しているファンは石田選手の活躍が日々の糧になっています。石田選手の存在を必要としています。そして横浜には石田選手が必要だと思っています。「優勝しなきゃいけない」と語っていた石田選手が横浜の優勝には欠かせない存在だと思っています。
石田選手に届くはずも無いですが、とにかく今の思いを言葉にしたくて、久々に筆を取りました。
石田選手の幸せがファンの幸せです。
どうかこの先、幸せな野球人生を送れる選択になりますように。
石田を取り巻く「可哀想」について思うこと
湿っぽいタイトルで申し訳ないのですが。
私は、石田を「可哀想」だと思いたくない。
言いたいのはただそれだけです。
本当は先発したいのに今年も中継ぎで「可哀想」。火消しばっかりで「可哀想」。回跨ぎさせられて「可哀想」……。
色んな「可哀想」が取り巻いているなあ、と思います。
もちろん、石田が可哀想だという気持ちも、石田への愛情の一つであるのは間違いないと考えています。石田のために怒っているということが、その深さ、強さを証明していますよね。
でも、私は「可哀想」だと思いたくない。
それが何故か、というお話をさせてください。
そもそも私が石田のファンになったのは、「かわいそう」だと思ったからです。
防御率のわりになかなか勝ちがつかなくて、なんだか「かわいそう」なルーキーだな。
この「かわいそう」はたぶん「可哀想」ではなく「可愛そう」。放っておけないなあ、とか、来年はきっと活躍するから応援したいな、とか、そういうニュアンス。
個人的に「可愛そう」な人を推す傾向があるのは間違いないのですが、それはどこか寂しい感じがするとか、生き方が不器用とか、そういう人を放っておけなくなる、という種類の「可愛そう」であって、言葉を変えると「守りたい」とかそういう感じ。もっと気持ち悪い言葉で言えば庇護欲や母性本能をくすぐられる、そういう意味での「可愛そう」なんですよね(知らんがな)。
「かわいそう」という言葉がそもそも「可愛い」から成り立っているので、あながち間違いではないでしょう。「可愛そう」と「可愛い」は紙一重なのです。
「かわいそう」に「可哀想」という字が当てられるようになったのは、時代を経て"哀れみ"というニュアンスが強くなっていったからなのだそうです。
今の石田を取り巻く「かわいそう」は、「可愛そう」ではなく「可哀想」なんだと思います。
でも、哀れみや同情って、弱い立場とか、つらい状況の人に対して抱く感情ではないのか?今の石田って、そういう「可哀想」な人なのだろうか?という疑問を抱いてしまうのです。
たとえば、"本当は先発したいのに今年も中継ぎで「可哀想」"なんかは特に、石田を「可哀想」な人だと決めつけている、勝手にそういう枠におさめている、そんなふうに思えてなりません。
今の石田をちゃんと見て欲しい。
石田が嫌々中継ぎをやっているように見えますか?そんな気持ちの選手が窮地を救えると思いますか?
「優勝したい」という選手は数多くいるが、「優勝しなきゃマズい」と危機感をもって語る選手はあまりいない。ましてや1998年以来20年以上リーグ優勝できていない横浜DeNAベイスターズの選手であればなおさらだ。
しかし、石田健大は真剣な表情で言うのだ。
「今年じゃないかなとは思っているんです。今シーズン獲れなかったら、逆にマズいと思うんですよ」
DeNAを優勝に導くは石田健大か。頼れる投手の今季にかける決意。 - プロ野球 - Number Web - ナンバー
「任されたポジションで結果を出すことしか考えていません。どのポジションでも自分の力を出し切り、チームの勝利に貢献できる投球をするだけです」
DeNA石田は中継ぎで開幕へ、ラミレス監督が明言 - プロ野球 : 日刊スポーツ
チームの勝利のためなら、ポジションは関係ない。任されたポジションで全力を尽くす。
本人がそう言っているのに、ファンだけでなく解説者まで「先発でもおかしくないんですけどねえ」とか「先発したいんじゃないんですかねえ」とか言い出す始末……。
石田は先発でも活躍できる。
そう思ってもらえるということはそれだけ、石田の能力が評価されているのだと思います。だからファンとして嬉しい気持ちもあるんです。
でも、今の石田は先発じゃない。
中継ぎとして、全力を尽くしている。
ならば、中継ぎとしての活躍を評価すべきではないか。
石田の活躍は数字としてもちゃんと残っていますので、リンクを貼っておきます。
石田 健大(横浜DeNAベイスターズ) | 個人年度別成績 | NPB.jp 日本野球機構
- nf3 - Baseball Data House DeNA - 投手成績 14 石田健大 -
もしかしたら今後チーム事情が変わって、石田が先発すべきタイミングが来るかも知れません。でもそれは「もしも」の話であって、「もしも」の話をすることにさして意味を感じないのです。
それに、そのときが来たとしても石田はきっと言うでしょう。
「任されたポジションで結果を出すことしか考えていません。どのポジションでも自分の力を出し切り、チームの勝利に貢献できる投球をするだけです」と。
石田は、決して「可哀想」なんかじゃない。
以上、オタクの妄言でした。
すべてが今になる
先発・石田健大が見たい。
そう思い始めたのはいつからだろう。
言葉にしようと決めたのは5月の頭だったけれど、気持ちはもっとずっと前からあったような気がする。
「石田は中継ぎの方が向いてる」とか「ファンが何でそんなに先発にこだわるんだ」っていう人もいた。そういう人たちの意見を目にすると、自分は間違ってるんじゃないか、身勝手なファンなんじゃないか、という気持ちになってしまうことも、正直何度もあった。
それでも私は先発・石田健大が見たかった。
石田が"先発をやりたい"と言っていたから。
実際のところ、ただそれだけのことだったのだと思う。
やりたいことをやりたいと言うのは、簡単なようで難しい。自分のやりたいことが何なのか分からない人、やりたいことを諦めた人、あるいはやりたいことと向いていることが違う人。世の中はそんな人だらけだ。
石田にだって別の選択肢があったかも知れない。中継ぎが向いているのではないかと言われ、そう言われるだけの成績を残しているのなら、先発への想いを捨てて中継ぎに転向するという道を選び取ろうと思えばできたはずだ。実際、チーム内にはルーキーから守護神として活躍する同期の山﨑、「球界一のリリーバーになりたい」と中継ぎに活路を見出だした砂田、リリーフに転向したことで見事な復活を果たした三嶋、国吉のような選手もいるのだから。
でも、石田はそれをしなかった。
中継ぎというポジションを与えられてなお、先発への熱を静かに燃やし続けた。
私はそこに人間・石田健大を見た気がした。
強い人だ、と思った。
プロ野球は夢のある世界だけれど、結果を残さなければ生きていけない厳しさもある。
そういう世界で自分が選んだ道を進みたいと言えるのは、そう言えるだけの覚悟があるのだろう。
ならば、見届けたい。石田の望む未来を、この目で見てみたい。
大袈裟かも知れないけれど、こうして"先発・石田健大"は私の夢になった。
あるいは、叶わなかった自分の夢をどこかで石田に託していたのかも知れない。
「なんでもいいから1つだけ1番になれることを見つけてください」
プロ入りが決まったとき、石田は母校の小学校でこう語ったという。
真っ白な輝かしい未来が待ち受けている子どもたちに向けられた言葉は、大人になってしまった今の私にとってあまりにも重たく、鉛のように胸の奥に沈んでいった。1番になれることなんて私には何ひとつ無いから。
だからせめて、石田に夢を見たいと思った。
石田の中の"1番"は、たぶん先発で輝くこと。
そのために石田はどんな進化を遂げるのだろう。
・ベース盤の上で伸びる球の習得
・スライダーの使い方
・新たな武器としてのカーブ
DeNA山﨑・石田・三嶋・熊原が自主トレ開始。今季の意気込み一問一答 | ニコニコニュース
DeNA 石田、4回6安打2失点に反省…降板後はブルペンで投げ込み― スポニチ Sponichi Annex 野球
DeNA石田「必要」球速差50キロのカーブに光明 - プロ野球 : 日刊スポーツ
シーズン前に取り組んでいた課題はこんなところだった。
ストレートに関しては「球は速くなっても打たれる球は打たれますし、そのためには何がいるのかを考えると、コントロールやバッターの手元で伸びる球が必要だと思う。」との発言があったので、今年はあまりスピードにはこだわらないのかな、と思っていた。
実際、怪我が治り中継ぎとして一軍に復帰してからも、しばらくは昨年と異なり150キロを超えることはなかった。
だから、6月19日の石田には本当に驚かされた。
150キロを超えるストレートで面白いように空振りを奪っていく姿に、全身の血が沸き立った。ゾクゾクした。
明らかにその日の石田は何かが違っていた。
その「何か」の答えは、後にFORREALで明かされることとなる。
石田はこの日、これまでにない手応えを感じていたという。
「いい攻めはできていたと思います。インコースを突けなかったことや、スライダーの前のボールで決着をつけられなかったことは、打たれてから見えてきた課題でもある。1点は取られてしまいましたけど、一球一球、しっかり考えながら投げることができた対戦だったのかなとは思います」
木塚コーチの目にもそれは明らかだった。
「(ストレートに)いままで見たことがないような強さがあった。それに、意思がこもったボールだったように、ぼくには感じられた。ひいき目もあるのかもしれないけど、本当に魂がこもっていたと思う。」
「ピンチを抑えたからじゃなくて。狙って三振が取れた、意思を込めた1球で自分が考えるアウトの取り方ができたからこそ(グラブを叩くしぐさが)出るんだと思う。あれはもう、ぼくもゾクゾクっとする。ああいうのを見ると(中継ぎをやって)マイナスじゃなかったなっていうのはすごく感じますね」
「背番号14が立つべき場所は。」「FOR REAL-in progress-」 | 横浜DeNAベイスターズ
"意思がこもったボール"。
これが、「何か」の正体なのだと思う。
7月に入ると石田は2日、4日と二度もヒーローに輝く。特に4日は3イニング無失点の好投を魅せ、先発復帰への足掛かりを作った。
そして、7月19日午後5時15分。
石田が先発に復帰する。
10日に抹消された時点で分かっていたはずだった。だが人間とは不思議なもので、現実が近づくにつれその大きさを受け止めることができなくなっていた。
嬉しい。でも怖い。
夢が叶うとは、そういうことなのだろう。
私にも将来の夢みたいなものを抱いていた頃があった。でもそれは経済的に不安定であるとか、安定した職業に就いてからでも遅くない、といった理由で周囲に反対されてしまった。周囲の反対を押しきれるほど私は強い人間ではなかったし、結局のところそこまでの夢でもなかったのだと今となっては思う。
それ以来は自分にあまり期待していないし、何かを強く望んだこともなかった。
だから、石田の先発復帰に懸ける想いは本当に特別だった。
本当に気持ち悪いな、と自分でも思う。
だけど、何かを望んで、それが叶うとき、どんな気持ちになるのか知りたかった。
一瞬たりとも見逃したくなかった。
そんな重すぎる感情を抱いた私とは反対に、試合前の石田の表情はとても穏やかだった。
久々の先発のマウンドを楽しもうとしている、そんなふうにも見えた。
私も次第にワクワクしてきた。
先発復帰のマウンドで石田は、どんなピッチングを魅せてくれるのだろう。
期待通り、いや、それ以上に、石田はあまりにも良かった。
初回からストレートは150キロを超え、変化球にはキレがあった。
3イニングを完璧に抑えた石田は、星みたいだった。
命を燃やしながら、明るく大きく輝く星。
苦しんだ過去も、中継ぎの経験も、全てをエネルギーにして燃やしているようだった。
そんな感想を持ったのは登場曲の歌詞に影響されたところもあるかも知れない。
“Tonight,
we are young
So let’s set the world on fire
We can burn brighter than the sun”We Are Young (Fun ft.Janelle Monae)より
後から石田が「いつ、つぶれてもいいと思っていた」という記事を読んで、納得した。
DeNA石田463日ぶり先発白星…いつもと違う - プロ野球 : 日刊スポーツ
このまま燃え尽きてしまうのではないかと思わせるような、命を削っているかのような、そんなピッチングに思えた。
「終盤の1アウト、ランナーがいるところでの1アウトが難しい。1球に対して意思を持ちなさい。どういうアウトを取るのか、どういう空振りを取るのか、どういうファウルを取るのか。先発の時の倍、3倍、球に意思を込めなさい。それが絶対に、お前の財産になるから」
という木塚コーチの言葉をふと思い出した。
意思のこもった、魂のこもったボール。
命を削っているように感じられたのは一球一球に魂がこもっていたからなのかも知れない。
「リリーフでは1イニング、1人に投げるために毎日調整し、全球全力で投げていた。(先発のとき)そういう気持ちがなかった。初回から最後まで全力で腕を振って投げていけたらいいかなと思います」
中継ぎの経験が、バッターとの向き合い方、アウトの取り方を見つめ直すきっかけとなって、意思のあるボールという大きな財産を石田に与えてくれたのだ。
元を辿れば、昨年の不調が無かったら石田が中継ぎにまわることも無かったかも知れない。
中継ぎの経験が無ければ、意思のあるボールを投げることは出来なかったかも知れない。
そうやって、すべてが今の石田に繋がっているのだ。そのすべてを糧にして、いま石田は投げている。
5回表チェンジアップで藤井を空振り三振に打ち取ると、石田はウイング席上段からの肉眼でもはっきりと分かるほど、大きく強くグラブを叩いた。
その仕草こそ、意思のこもったボールを投げられた何よりの証拠なのだと思う。
だから、本当に勝って良かった。
抑えの山﨑が最後のバッターを打ち取った瞬間、涙が溢れだした。
先発としては463日ぶりの勝利。ずっとこの日を待ち望んでいた。
「最高に嬉しいです」
その一言で充分だった。
石田を応援してきて良かった。
石田に夢を見て良かった。
心の底からそう思えた。
そんな気持ちにさせてくれる野球選手に出会えて、私は本当に幸せだと思う。
石田ありがとう。
これからもずっと応援しています。
先発・石田健大
「先発をやりたい」――石田は、ことあるごとにそれを口にする。
昨年末の契約更改では球団幹部に「先発をやらせてください」と懇願したというのだから、その気持ちがかなり強いものであることに間違いはないだろう。
しかしながら、今の石田に与えられたポジションは“中継ぎ”である。中継ぎの重要性は理解しているし、リリーフでしか味わうことのできない感覚にやりがいも感じている。それが今の自分に求められている役割だということも。それでもなお、「先発でやっていくことがいちばん」だと石田は言う。
石田がそこまで先発にこだわり続ける理由はなにか。
2018年8月28日。そのヒントがこの日にあるのではないかと私は考えている。
石田は8月15日に先発したものの6回5失点。三度目の登録抹消を経て、この日中継ぎとして一軍に復帰することとなる。
試合は1回にソトのホームランで先制、2回に嶺井のタイムリーで2-0とリードを広げるも、先発平良が4回5回と中日打線に捕まり同点。これ以上の失点は許されない――そんな張りつめた空気で迎えた6回表。横浜スタジアムにアポロが鳴り響く。
その瞬間のスタジアムに渦巻いた熱狂がすべてを物語っていたように感じる。“エース”と呼ばれた男の帰還を、誰もが待ちわびていたのだ。ベイスターズには石田の力が必要なのだと信じ続けたファンの姿がそこにはあった。「石田、待ってたぞ」「がんばれ」リリーフカーに乗った石田の背にあちらこちらから声援が降り注いだ。
そんなファンの期待に応えるかのように、石田は完璧なピッチングを魅せる。前の打席でタイムリーを放った福田を三振に打ち取ると、後続の松井、ガルシアも連続三振。7回も平田をサードゴロ、京田をセンターフライ、大島を空振り三振に打ち取る。150キロに迫る力強いストレートと、キレのある変化球。圧巻だった。
「流れ」というものがあるとすれば、石田の気迫溢れるピッチングがチームに良い流れを引き寄せたのではないだろうか。7回裏2アウトの場面で嶺井にソロホームランが飛び出し勝ち越しに成功、その後8回裏にソトの2ランホームランで追加点。ベイスターズが見事勝利を収めた。それは同時に石田に勝ち星がついたことをも意味する。リリーフとしては2勝目、シーズンではようやく3勝目。石田はお立ち台でほっとしたような笑みを浮かべていた。「投げることが幸せ」という言葉通り、横浜スタジアムのマウンドで投げられること、そしてようやく掴んだ勝利の喜びを噛みしめているようにも映った。
この日の勝利を石田は後に「今までの1勝でいちばん嬉しかった」と語る。「何度も同じような光景は目にしているのに、なにかあのときはすごく違ったというか」「今振り返ってみるとそのくらい重い1勝だった」。(FORREAL2019特典映像より)
それだけ、石田は勝利というものを欲していたのだと思う。先発として、エースとして、勝ち星を積み重ねていく。それが石田にとっての喜びなのではないだろうか。高校、大学、そしてプロに入ってからも、石田の中には確かに“エース”としての自覚と矜持があるのだ。
同時に、石田は感謝を忘れない人でもある。中継ぎを経験したことで、自分が今までいかにリリーフ陣に助けられてきたかを実感したのだという。それだけでなく先発で結果を出せないなか中継ぎとして一軍で投げるチャンスを与えてくれた首脳陣、苦しいなかでも声援を送り続けたファンへの感謝もたびたび口にしている。“エース”としてきちんと試合を作ること、そして勝つこと。それが石田なりの恩返しなのではないだろうか。
今の石田に話を戻そう。昨シーズン終了後、石田はまず「良いときの状態に戻す」ことから始めようとしていたのだが、ここでいう「良いとき」とは2016年(特に月間MVPを受賞した5月)を指す。2016年5月は意外にもストレートの最速が144キロ程度でそれほど速いわけではない。それでも打たれなかったのは“キレ”と“ノビ”があったからだろう。今年石田が目指しているのもおそらくそこで、中継ぎ登板ながら未だに150キロを超える球を投げていない。しかしストレートの被打率は.214、被安打数3、被本塁打0と、昨年に比べてかなり改善されている(昨年は被打率.299、被安打数49、被本塁打10)。ストレートだけではない。これまでいわゆる見せ球のような使い方をしてきたカーブが決め球になったり、左バッター中心に投げていたスライダーを右バッターにも投げてみたりと、「良いとき」に戻るだけではない進化を石田は着実に遂げている。そしてその進化はいつか訪れる、先発として、“エース”としての勝利のためにあるのだ。
その日がいつ訪れるのか、あるいは訪れないのかはわからない。それでも信じて待ち続けようと思う。
私は、先発・石田健大が見たい。
今、アンタ輝いてるよ~宝石のような石田~
まさか2日後だとはさすがに予想してませんでしたよ。
前回のブログが恥ずかしい感じになっちゃったじゃないですか、どうしてくれるんですか(笑)
今日の石田は解説の遠藤さんもおっしゃってましたが、とにかくキレがありました。
まず6回表梅野への5球目のチェンジアップ。ど真ん中にも関わらず空振りしてしまうんですよね。チェンジアップの空振率は元々かなり良い数字ではあるのですが(26.53%)、今日はいつも以上に変化量が大きかった気がします。加えてスピードも出ていた。普段130キロ前後にも関わらず今日のチェンジアップは最速136km/h。これにはかなり驚きました。
ストレートもめちゃくちゃ良かった。最速150km/h、平均147.5km/hで3イニング投げても最後までスピードが落ちませんでした。
どの球も良かったのですが、一つ挙げるとすれば7回表、近本への4球目でしょうか。
高めのインコースにしっかり決まっていて148km/hとスピードも出ていました。バッターの振り方からしても打てそうにない球でしたよね。完全に差し込まれていたと思います。球威、キレ、コントロール全てが揃っていたと言っても良いのではないでしょうか。
スライダーもずっと良かったですよね。左バッターの外角低めに投げると外れてしまうことも結構多いのですが、今日はストライクゾーンにきちんと投げられていました。
「スライダーが決まっている日の石田は調子が良い」という私の持論があるのですが、また証明されたように思います。
特に7回、糸原に2球連続で投げていましたが、かなり曲がっていたように見えました。思わず「エグい」とツイートしてしまったほどです。
8回のマルテへの1球目も良かった。あのコースに投げられるなら対右にスライダーを使うのもありだなと思いました。
3回を33球で終えたのは本当に素晴らしいと思います。テンポの良い投球というのはやはり流れを呼び込むものなんでしょうかね?
戸柱のホームランも飛び出して、最高の試合になりました。
今日の石田を見てそろそろ先発しても良いんじゃないかと思ったそこの貴方、先発石田教に無事入信されましたね。おめでとうございます。
とにかく今日の石田は本当に最高でした。
ありがとうございました。
いつかその手に
石田のお立ち台。私の記憶が正しければ昨年の8月28日以来、約10ヶ月ぶりである。
あの日も今日も石田は中継ぎとしてお立ち台に上がっているのだが、その胸中は少し異なっているように映った。
8月28日は三度の登録抹消を経験したのち中継ぎとして一軍に復帰し、ようやく掴んだ3つ目の勝ち星だった。「投げることが幸せ」そう言いながら浮かべた安堵の笑みが、いかに苦しいシーズンを過ごしてきたかを物語っていた。だがこの時の石田は、嫌な言い方をすればある意味自分のために、自分を取り戻すために投げていたようにも思える。
そして今日。石田は二死満塁の場面での心境を問われ、「上茶谷が頑張っていたので」「上茶谷に失点をつけないように良いピッチングができたかなと思います」と話した。この言葉が意味するものとは、"誰かのために"投げることではないだろうか。そして、それは同時に中継ぎとしての自覚をも表している。
先日公開されたFORREALで石田は
「ぼくが先発をやっていた時に、勝ちを守ってくれた中継ぎのピッチャーがいっぱいいる。いまは、そういうピッチャーがやってくれたことをぼくが逆にやらないといけない立場だと思っています」
「背番号14が立つべき場所は。」「FOR REAL-in progress-」 | 横浜DeNAベイスターズ
と語っていたのだが、今日の石田はまさしくこの言葉を体現していたといえる。
先発への想いを滲ませながらも、石田の中には確かに中継ぎとしての自覚そして誇りが芽生えているのではないだろうか。
今日石田がお立ち台に上がることができたのは、今日の結果によるものだけではないはずだ。中継ぎとして与えられた仕事に全力で取り組んできたその姿勢にお立ち台という形で光が当たったのだと私は思っている。
次に石田がお立ち台に立つのはいつになるのか、それは誰にも分からない。
だが、そのときにはきっと石田の手には求め続けた勝ち星が掴まれていることだろう。
新時代の幕開けは背番号14と共に。
令和元年5月1日。そんな特別な日に石田は帰ってきた。
前夜からなんとなく予感はしていたのだ。一方で予感は予感にすぎないとどこか冷めている自分もいた。だから朝ツイッターを開いて目に飛び込んできた「ハマスタで石田目撃」という文字も、にわかには信じがたかった。公示が出てもそれは変わらなかった。
石田がハマスタで投げる。
3月2日の日ハム戦で肘を痛めてから約2ヶ月間、毎日気が気でなかった。石田の離脱が発覚すると迷わず長浦に向かっていた。その足で鎌倉に行き、すがるような思いで御守りを買った。自分が長浦に行けない日も欠かさず情報をチェックした。4月16日、ジャイアンツ球場で石田の実戦復帰登板を見届けた。20日の横須賀スタジアムでは久々のアポロに血が沸き立った。そして27日の鎌ヶ谷スタジアム。石田のピッチングはいつ一軍に呼ばれてもおかしくないと感じさせる内容にまで仕上がっていた。
そうやってできる限り石田の経過を見てきたからこその予感だったのだろう。自分の目に狂いはなかった、などと誇れたら良かったのだが、私にそんな余裕はなかったし、そう思えるほどの行動もしていないのが事実である。
覚悟はできていたはずなのに、焦りと緊張で気が狂いそうだった。
どうしよう。どうしよう。どうしよう。
動転する私をよそに、その瞬間は確かな足取りで刻一刻と迫っていた。
7回表。大貫が西田にフォアボールを許し、マウンドに内野陣が集合する。
あ、番長だ。まだ交代はしないかな。あれ、ラミちゃんも出てきた。ピッチャー交代か、誰だろう。もしかして石田?まさかね。でも試すならここかな。
この日をずっと待ち望んでいた。だからこそ怖くもあった。全身の震えが止まらなかった。でも逃げてはいけないと思った。一ファンとして、ちゃんと見届けよう。ハマスタに帰ってきた石田をこの目に焼きつけよう。そんな決心をした。
雨の降りしきるハマスタにアポロが流れる。
石田だ。
石田が帰ってきたんだ。
気がつくとリリーフカーに乗った石田の背に向かって「おかえり」と叫んでいた。
リリーフカーを降りた石田がハマスタのマウンドに向かう。土の感触を確かめるように地面を蹴る。帽子のつばに少し触れてから、セットポジションに入る。そうしてようやく石田の手からボールが放たれる。全てが神聖な儀式のようだった。
私はそれをカメラ越しに見つめていた。手は勝手にシャッターを切っていた。一瞬も見逃すまいという気持ちがそうさせたのだろう。一方で頭は気味が悪いほど冷静だった。
初球は145km/hのストレート。アウトコース低めにやや外れた。
スピードはここ最近でいちばん出ている。緊張からか少し力んでる印象だけど、球は悪くなさそう。これなら大丈夫かな。
違う。そうじゃない。もっと何かあるだろう、泣くとかはしゃぐとか。分析なんかしてる場合ではないのに。
あれ、ストレートばかりだな。何か意図があるんだろうか。スピードは出ているし今日はストレートで押していくのかな。
感情が迷子になってしまった私はそうやって拙い分析を繰り返すしかなかった。
その後太田にフォアボールを許すも、それに対する焦りは不思議となかった。抑えてくれると信じていたのだと思う。
期待通りという言葉が正しいのか分からないが、石田は青木、山田を三球三振に打ち取った。鮮やかだった。
ライトスタンドから温かな拍手が送られる。
石田、愛されてるんだな。信じて待っていて良かった。石田のファンになって本当に良かった。
ようやくそんな感情が湧いてきた。
石田ありがとう。おかえりなさい。
令和の始まりと共に石田もまた始まった。
今年の石田は、きっと輝いてくれる。